明石海峡大橋

明石海峡大橋と徳島の交通機関

明石海峡大橋は遠まわりルート

徳島から本州へ上陸するルートは2つあります。
ひとつは明石海峡大橋を経由するルート。
もうひとつは南海電気鉄道の鉄道連絡船を運航する南海フェリーを利用して和歌山を経由するルート。
明石海峡大橋を経由するルートは神戸・阪神地域と徳島を最短で結ぶルートですが、 大阪以東・以南から徳島へは和歌山経由のほうが最短ルートとなります。
例えば、大阪―徳島間の距離だと、 明石海峡大橋を経由する高速バスのなんば高速バスターミナル―徳島駅前間の距離は148.8kmであるのに対して、 南海フェリーと南海電車の難波―徳島港間の距離は128.0kmです。
また、関西空港―徳島間の距離だと、 明石海峡大橋を経由する高速バスの関西空港―徳島駅前間の距離は178.0kmであるのに対して、 南海フェリーと南海電車の関西空港―徳島港間の距離は102.8kmです。

明石海峡大橋と公共交通機関

明石海峡大橋開通前、本州と徳島を最速で結ぶ交通機関は高速船でした。 徳島高速船は徳島港―関西空港―天保山(大阪港)、徳島港―鳴門港―神戸港中突堤、鳴門港―天保山(大阪港)の各航路に高速船を運航していました。
徳島港からの所要時間は関西空港まで1時間21分、天保山まで直行便で1時間45分、神戸港中突堤まで直行便で1時間50分でした。
現在はフェリーのみ運行している南海フェリーも高速船を運航していました。航路名は「南海徳島シャトルライン」。
所要時間は難波―和歌山港間が特急サザンで約1時間、和歌山港―徳島港間が高速船で1時間でした。

明石海峡大橋開通日の翌日、徳島高速船は全線廃止となりましたが、徳島港―関西空港―天保山(大阪港)の航路だけは新会社の徳島関空ラインに引き継がれました。
同日、徳島駅前となんば高速バスターミナルを3時間15分で結ぶ高速バスが運行を開始しました。
高速バスは後にスピードアップして、徳島駅前―なんば高速バスターミナル間の所要時間は3時間となります。
しかしながら、高速バスよりも高速船のほうが、所要時間の面で有利であることに変わりはありませんでした。
しかし、高速バスの定員は40名であるのに対し、高速船の定員は300名なので、高速バスのほうが低コストで運行でき、本数も多いこと、 また本州―徳島間の移動手段として自動車利用が増えたことなどから、高速船の利用者数は減少し、航路を維持することは困難となりました。
その結果、徳島関空ラインは2000年3月1日に廃止、南海徳島シャトルラインは2002年2月1日に廃止となりました。
残ったのは和歌山港―徳島港間を2時間で結ぶフェリーによる鉄道連絡船と高速バスだけになりました。
明石海峡大橋開通により、公共交通機関の所要時間は長くなってしまったのでした。

解決策は南海電車の延伸

明石海峡大橋開通により、公共交通機関の速達性、定時性は失われてしまいました。
しかしながら、解決策がないわけではありません。
南海電車を淡路島・徳島へ延伸することで本州へのアクセスの不便さを解消することができます。

南海電車を淡路島・徳島へ延伸すると、徳島港から和歌山市まで53分、関西空港まで72分、難波まで87分で行くことができます。

南海電車の延伸の詳細は下の画像をクリックしてください↓

神戸港と四国を結ぶために造られた道路

明石海峡に橋を架ける構想を提唱したのは原口忠次郎という人でした。
昭和24年に神戸市長に就任した原口氏は、 神戸港の発展のためには神戸市自体の産業振興を図ることと新しいヒンターランドを開発することが不可欠の要件であるとしました。
新しいヒンターランドとして播磨工業地帯と四国が選ばれました。
原口氏が神戸港の新しいヒンターランドとして四国を選んだのにはきちんとした理由がありました。
当時の四国には、電力、工業用水、石灰石、硫化鉱、森林資源に恵まれており、工業化に有利な条件がそろっており、 化学繊維、パルプ、化学、製紙、セメント、鉄鋼、食料品、合成樹脂、機械金属、化学肥料、石油化学といった工業が発展する可能性がありました。
そのためには、四国で生産された工業製品を神戸港へ輸送する道路、すなわち明石海峡架橋が必要だったのです。

このように、明石海峡大橋は神戸港と四国を結ぶために造られた道路であるため、 神戸と四国を最短で結ぶ道路ではありますが、徳島と大阪以東・以南を結ぶ道路としては遠まわりルートなのです。
また、神戸市と神戸港を取り巻く環境も、架橋構想当時と現在とでは大きく変わりました。
架橋構想当時の神戸港は輸出額、輸入額ともに全国1位の貿易港でした。
1957年の神戸港の輸出額は4224億円で全国シェア41%、輸入額は3246億円で全国シェア21%だったのです。
しかし、2018年の神戸港は輸出額5兆8198億円で全国シェア7.1%の5位、輸入額は3兆4385億円で4.1%の8位にまで転落しました。
神戸市の人口も2012年以来、毎年連続減少しており、全国の政令指定都市では北九州市に続く第2位の人口減少率となっています。