鉄道旅客を奪う高速道路の値下げ

高速道路が開通したことにより、鉄道旅客が減少したという話は全国各地にありますが、徳島も例外ではありません。
南海電気鉄道の鉄道連絡船を運航している南海フェリーを例にして話を進めていきます。

南海フェリーとは

南海電気鉄道の子会社であり、和歌山港と徳島港を結ぶ鉄道連絡船を運航している海運会社です。
和歌山港と徳島港を結び、和歌山港にて難波―和歌山港間を結ぶ連絡特急に連絡しています。
また、鉄道連絡輸送だけでなく自動車航送も行っております。

2009年から2010年にかけて輸送量が大幅に減少

2005年から2014年までの10年間の南海フェリーの輸送実績は以下の通りです。

車両(自動車航送台数)
2005年:185,694台
2006年:181,538台
2007年:181,052台
2008年:169,945台
2009年:195,397台
2010年:141,543台
2011年:136,333台
2012年:139,750台
2013年:139,368台
2014年:141,737台

非車両乗客(ほぼ鉄道連絡客とみなしてよい)
2005年:381,539人
2006年:365,957人
2007年:345,517人
2008年:327,315人
2009年:314,510人
2010年:263,359人
2011年:255,210人
2012年:259,055人
2013年:257,082人
2014年:258,981人

2005年から2014年までの10年間の南海フェリーの輸送実績を眺めていると、2009年から2010年にかけて大幅に減少していることに気づきます。
また、2011年以降は2009年以前の水準に戻ってないことが分かります。

2009年に神戸淡路鳴門自動車道の通行料金が値下げとなる

2009年3月28日から、2011年6月19日までETC車両に限り、全国の高速道路料金を休日上限1000円にする施策が行われました。
それまで、神戸淡路鳴門自動車道のETCでの通行料金は鳴門ICから神戸西ICまで全線を乗り通すと5150円でした。

神戸淡路鳴門自動車道の通行料金が値下げされることで、南海フェリーの利用者数が減少することが予想されたため、徳島県と和歌山県は南海フェリーの自動車航送料金を1000円にする施策を行いました。
実施期間は2009年7月18日から8月31日までの毎日でしたが、2010年の3月31日まで延長されました。延長期間である2009年9月1日以降は休日のみ実施されました。
この施策のおかげか、南海フェリーの2009年の自動車航送台数は前年比14.9%の増加となりました。一方で、鉄道連絡客は4%減少しました。

南海フェリーの自動車航送料金を1000円にする施策は2010年の3月31日で打ち切られたのに対し、高速道路料金休日上限1000円は2011年6月19日まで続きました。
この影響を受けて2010年の南海フェリーの輸送実績は前年比21.6%の減少となりました。

さらに追い打ちをかけるように、2011年6月20日から神戸淡路鳴門自動車道の新料金が設定されました。
新料金は平日休日ともに鳴門ICから神戸西ICまで2725円となりました。
前述したように2009年3月27日以前の鳴門IC―神戸西IC間の料金は5150円でしたので大幅値下げとなりました。

2006年から2012年までの大鳴門橋の1日平均通行台数は以下の通りです。

2006年:19,449台
2007年:19,189台
2008年:19,255台
2009年:23,337台
2010年:23,569台
2011年:22,787台
2012年:23,233台

新料金の設定により、通行料金の実質値下げが継続となったため、2009年に前年比21.1%の増加となった以降は、ほぼ横ばいで推移しています。

高速バスも旅客数減少

徳島バスの大阪行きの高速バスの1日平均旅客数(共同運行会社は除く)
2008年:713.8人
2009年:630.6人
2010年:641.8人

最後に

神戸淡路鳴門自動車道の通行料金値下げにより、南海フェリーの利用者数は大幅に減少しました。
また、値下げの実質継続により利用者は値下げ前の水準に戻っていません。

高速道路の通行料金が安くなることは高速道路の利用者にとって便益のあることですが、本州への都市間輸送を渋滞を伴う不安定な道路交通に任せてしまってもいいのでしょうか?

公開日:2023年02月15日
最終更新日:2023年02月15日